2025年12月25日(木)
カスタマーハラスメント ――従業員を守る企業の責任
顧客の満足度を最優先に考える姿勢は、企業の信頼を支える大切な価値観のひとつです。しかし他方で、その考え方が行き過ぎ、暴言や過度な要求、人格を否定するような言動を受けるケースが増えています。いわゆるカスタマーハラスメント(カスハラ)です。
カスハラ被害にあった場合には、対応した従業員に心身の不調が生じたり、パフォーマンスの低下や離職につながるケースも少なくありません。カスハラは、企業が組織として対応すべき重要な課題であり、従業員を守るためにも迅速な対応が求められています。以下では、カスハラの定義や最近の動向などについて、簡単にご説明します。
カスハラとは、一般に、顧客等からの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求当の著しい迷惑行為をいいます。2025年6月11日に公布された改正労働施策総合推進法では、カスハラとは、以下の3点をすべて満たすものと定義されました。
① 職場において行われる、顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であって
② その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより
③ 当該労働者の就業環境を害すること
顧客からのクレームは、それ自体が問題ではなく、商品・サービスの改善や接客態度の向上、新たな商品開発など、企業にとってプラスの効果を生む重要な役割を持ちます。しかし、その内容が過剰な要求や不当な言いがかりにまで及んだ場合には、もはや正当な「クレーム」とはいえず「カスハラ」に該当します。
では、どのような場合が「カスハラ」に当たるのでしょうか。これについては、業種や業態により様々な場面が考えられますが、基本的には、相手の「要求内容」とその「手段・態様」の2つに注目して判断します。
まず、相手の「要求内容」が明らかに妥当性を欠く場合や、自分の要求を実現するために暴力的な言動を用いるなど「手段・態様」が相当ではない場合には、「カスハラ」に該当する可能性が高くなります。また、「要求内容」に照らして「手段・態様」が行き過ぎる場合には、いわば「合わせ技」のような形で「カスハラ」と判断されるケースもあります。一般的には、カスハラに当たる場合として、次のようなケースが考えられるでしょう。
① 顧客等の要求の内容が妥当性を欠く場合
(例)提供する商品・サービスに瑕疵・過失が認められない場合
顧客等の要求内容が、提供する商品・サービスとは関係がない場合
② 要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当な場合
・顧客等の要求内容の妥当性にかかわらず、手段・態様が不相当とされる可能性が高いもの
(例)身体的な攻撃(暴行・傷害)、精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・暴言等)、威圧的な言動、執拗な要求、拘束的な言動(不退去・居座り等)、差別的な言動、性的な言動、従業員個人への攻撃・要求、土下座の要求
・顧客等の要求内容の妥当性に照らして、不相当とされる場合があるもの
(例)商品交換の要求、金銭補償の要求
これらの「カスハラ」について、企業は、ハラスメント防止のために雇用管理上必要な措置を講ずる義務を負います。具体的な内容は今後告示されますが、パワハラやセクハラと同じく、基本的には次のような取組みが求められる予定です。改正労働施策総合推進法(カスハラ防止措置)は、公布日から1年6月以内に施行されますので、早めに準備を進めておくことが望ましいでしょう。
<カスハラを想定した事前の準備>
① 従業員を守るという企業等の基本方針・姿勢の明確化、従業員への周知・啓発
② カスハラを受けた従業員の相談対応体制の整備
③ 対応方法、手順の策定
④ 従業員への社内対応ルールの教育・研修
<実際にカスハラが起きた際の対応>
⑤ 事実関係の正確な確認と対応
⑥ カスハラを受けた従業員への配慮措置
⑦ 再発防止の取組
⑧ 以上の①から⑦と併せ、相談した従業員のプライバシー保護措置を講じ、相談者である従業員に対し不利益な取扱いをしないことを定め、従業員に周知
カスハラに関する対応にあたって、疑問やお困りごとがございましたら、お気軽に仙台市雇用労働相談センターにご相談ください。
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弁護士 栗原 さやか(仙台あさひ法律事務所)
令和7年度 仙台市雇用労働相談センター相談員
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