これからの時代の多様な人材活用 ~「短時間正社員制度」評価の公平性がカギ~

2025年10月17日(金)

これからの時代の多様な人材活用 ~「短時間正社員制度」評価の公平性がカギ~

近年、育児や介護、病気治療など、フルタイム勤務が難しい事情を抱える人が増えてきています。人材不足に悩む企業にとっても、「働きたいのに時間に制約がある人材」をどう活用するかは大きな課題です。その中で注目されているのが「短時間正社員」という働き方です。この短時間正社員制度を導入する企業が増えています。

短時間正社員とは、フルタイムの正社員と比較して1週間の所定労働時間が短い社員を指します。
従来の「正社員」というと、フルタイムで勤務することを前提に考えることが通常でした。1日8時間・週40時間が標準であり、昇給や賞与、社会保険の加入、退職金制度等もその標準の働き方を前提に作られていることが多くありました。
一方、「短時間正社員」は、例えば1日の勤務時間を5~6時間に短縮しつつも、無期雇用であり社会保険や賞与の対象に含まれるなど、正社員としての安定性は確保したまま働くことができるのが大きな特徴です。育児や介護をしながら働きたい人や病気の治療をしながら働きたい人でも、キャリアを諦めずに継続して働くことができます。

所定の労働時間よりも短い時間で働く方法としては「時短勤務」もあります。時短勤務は、育児や介護といった特別な事情がある社員が一時的に勤務時間を短縮できる制度です。あくまで通常のフルタイム正社員が前提であり、一定の期間を過ぎればフルタイム勤務に戻ることを想定しています。短時間正社員とは、「最初から短い時間で働く正社員として雇用契約を結ぶ」点が異なります。

また、「パート・アルバイト」との違いもよく話題になります。パート・アルバイトは短い時間で働ける柔軟さがある一方で、昇給や賞与、退職金などの待遇は適用されないことが多く、キャリアの形成も限られています。

短時間正社員は、雇用の安定性や待遇面で正社員と同様の立場を持ちつつ、時間の制約に合わせて働くことができるという点でまさに“中間的な選択肢”として注目度が高くなっています。

短時間勤務制度の導入と運用には、働く人すべてが納得できる「見える公平さ」を伴う評価の仕組みづくりが重要です。本コラムでは、制度導入ステップと実務上の注意点について整理します。

1. 制度導入のステップ
①目的の明確化
まず、「なぜ導入するのか」を明確にします。
育児・介護との両立支援
治療と仕事の両立支援
人材確保・定着
など、目的に合わせた制度設計を行うことが重要です。

②就業規則・賃金規程の整備
制度を運用するためには規則に以下を定める必要があります。
短時間正社員の定義
勤務時間の範囲
給与・賞与・退職金の取り扱いについて
各種手当の支給基準

③人事評価制度との整合性
勤務時間が短いことを理由に、昇進評価から一律に除外することは不公平感を生みます。成果や役割に応じた評価を行えるよう、人事評価制度との整合性を取ることが必要です。

④対象労働者・利用条件の設定
利用の対象をどのような社員を対象にするのかを検討します。例えば、「育児・介護をする社員」に限定するのか、「フルタイム勤務が難しい社員全般」に広げるのかを検討する必要があります。検討する際は、将来的な活用を見据えて柔軟な条件を設定することが望ましいです。

⑤社内周知・相談体制の確保
制度を導入しても、従業員が知らなければ利用してもらえません。
社内説明会の実施や人事担当者による個別相談も窓口の設置など、従業員が安心して利用できる環境を整えることが不可欠です。

⑥運用後の検証
導入後は、制度利用の実績確認や社員からの意見確認を定期的に行い、制度の運用の改善につなげます。

2. 実務上の注意点
①公平性を保つ評価制度の設計
職務評価の活用
評価プロセスの透明化
管理者向け評価者研修の実施

②社内に不公平感を生まないための工夫
給与や賞与は時間比例で設計し、待遇差の説明をきちんと行う
働いた分に応じて支給するというシンプルな設計が納得感につながります

③業務分担を明確にする
短時間正社員とフルタイム社員の役割を分け、負担が偏らないようにします

④現場の声を定期的に収集できる機会を設ける
利用者本人だけではなく、同僚からの意見も集める機会を設けて改善につなげましょう


今すぐではないが将来的に短時間正社員制度の導入を検討したい、注意点などを聞いてみたい等ございましたら、お気軽に仙台市雇用労働相談センターにご相談ください。
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社会保険労務士 亀井 未来(社会保険労務士法人プロゲート 仙台オフィス)
令和7年度 仙台市雇用労働相談センター相談員

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