2025年11月21日(金)
就業規則作成と見直し ~見落としがちなポイント~
就業規則は「会社と従業員のルールブック」です。
しかし、就業規則に規定されていないことが原因の労務トラブルも後を絶ちません。
また、新たに作成したときは、十分に検討したつもりでも、法改正や働き方の変化により、
古いまま放置されたケースも多々見受けられ、就業規則の不備は、解雇・残業代・ハラスメント対応など重大なトラブルに直結します。
今回は、特に見落としがちなポイントを整理していきたいと思います。
目次
① 懲戒・服務規律の規定が古い、曖昧
SNS、AIツール、情報管理など、現代的な問題に対応できない規定が多く見受けられます。
具体的には、以下のような不足があるでしょう。
- SNS投稿・ネット炎上リスクへの対応
- 業務上デバイス(PC・スマホ等)の持ち出しや管理ルール
- 副業・兼業の取扱い(就業時間管理・情報漏洩)
- 懲戒手続きの合理性(弁明の機会等)
② ハラスメント対応の未整備
ハラスメント条項は、2020年、2022年施行の「パワハラ防止法」に関する内容反映が必須となります。
よくある問題は以下のとおりです。
- セクハラのみの記載でパワハラに記載がない
- 相談窓口の設置に関する記載がない
- 調査手順・再発防止措置に関する記載がない
③ 最新の法改正に対応していない
近年は労働関係諸法令の改正が相次いでおり、「3年以上見直しをしていない = 古い就業規則」といっても過言ではありません。
特に、反映漏れが多い内容は以下のとおりです。
- 2023年 : 月60時間以上超の割増率(中小企業も50%)
- 2022年 : パワハラ防止法義務化
- 2019~2021年 : 年次有給休暇5日取得義務、同一労働同一賃金
- 2025年 : 育児介護休業法の大改正
④ 実態と就業規則の内容が乖離している
実態と就業規則の内容がズレているケースが多々見受けられます。トラブル時に、会社の主張が通りにくくなりますので注意が必要です。
よくあるケースは以下のとおりです。
- 就業規則では、「週休2日(会社カレンダー)」となっているが、実態は「シフト制」
- 就業規則(賃金規程)にはない手当が実態では支給されている、または支給されていない
⑤ 変更手続・運用ルールの不備
就業規則を変更したが、手続きや運用が不十分で実際には効力が発生していないようなケースも見受けられます。
よくある不備は以下のとおりです。
- 「意見書」の労働者代表が、使用者側が指名した人となっている
- 周知義務を果たしていない
- ルールが現場に伝わっておらず、運用が部署ごとにバラバラとなっている
- 古い就業規則が残っており、どれが最新かわからない
⑥ 不利益変更のリスクを考慮していない
就業規則の変更は会社の自由と思われがちですが、従業員にとって不利益となる変更には法的ハードルがあります。
労働契約法第9条では、「労働者の同意なく不利益に就業規則を変更しても、その変更は無効」とされており、
会社は、「慎重に」「丁寧に」「段階的に」進めることが必要になります。不利益変更となる例は以下のとおりです。
- 皆勤手当等の廃止
- 残業単価(固定残業代含む)の減額
- 休日数の減少
就業規則を「機能するルールブック」とするためには、「作成→手続き→運用→定期的な見直し」という一連のサイクルを回し続けることが不可欠です。制度と実態のズレをなくし、法改正や働き方の変化に応じてアップデートを続けることで、会社と従業員双方にとって安心できる職場づくりにつながるでしょう。
就業規則の見直しは人事労務担当の皆様にとって時間と労力がかかる作業であり、どこから手を付ければよいかわからない場合もあると思います。そんな時は当センターにてサポートさせていただきますので、ぜひ一度ご相談ください。
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社会保険労務士 村上 一昭(村上社会保険労務士事務所)
令和7年度 仙台市雇用労働相談センター相談員
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