出来ていますか?同一労働同一賃金

2021年11月26日(金)

出来ていますか?同一労働同一賃金

働き方改革の一環で、同一労働同一賃金の対策が必要となりましたが、中小企業についても2021年4月1日から対象となっていることをご存知でしょうか?
本コラムでは、改めてこの同一労働同一賃金について解説をしていきます。

【同一労働同一賃金とは】

同一労働同一賃金という言葉が一般的とされていますが、正確には「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下、パートタイム・有期雇用労働法)」の法改正による、均等待遇・均衡待遇のことです。こちらの法改正は2020年4月1日から施行されましたが、中小企業は2021年4月1日からの適用となっています。つまり、現在はすべての企業において義務付けられています。

【︎均等待遇・均衡待遇とは】

簡潔に説明すると、パートタイマーや有期雇用労働者が正社員と同じ仕事をしているとき、その業務内容や責任の程度等が同じなのであれば、待遇も同じにするのが均等待遇、業務内容等に違いがあったとしても、その違いに応じた待遇にする必要があるのが均衡待遇です。単に「パートタイム・アルバイトだから」「有期雇用だから」という理由による待遇の相違を作ることができなくなったということです。

【︎同一労働同一賃金の例】

厚生労働省のガイドラインを参考に、同一労働同一賃金の例をいくつか見てみましょう。

  1. 基本給
    基本給については、能力・経験、業績・成果、責任の程度等々、様々な要因に応じて変わります。
    能力・経験について、有期雇用労働者に比べて多くの経験を有することを理由に、正社員は多くの基本給を支給しているが、これまでの経験は現在の業務と関連のない経験であるケースは問題があるとされます。
    業績・成果について、目標を達成した場合に支給する部分がある場合に、達成率に応じた基本給を支給するのは問題となりませんが、正社員よりも労働時間の短いパートタイマーが正社員と同様の目標設定を達成しないと支給されない場合は問題となります。
    勤続年数について、有期雇用労働者に対しては通算の勤続年数を評価せず、その時点の労働契約期間についてのみ勤続年数として評価しているケースは問題があるとされています。
    なお、正社員は月給制、パートタイマーやアルバイトの場合は時給制にしている会社も多いと思いますが、これを月給制にするところまでは求められていません。この場合、月給を時間給換算した賃金額と比較することになります
  2. 通勤手当
    通勤は、すべての労働者が行う行為であることを考えれば、通勤手当については職務内容等に関係なく、すべての労働者に支給するべきとされています。ただし、すべての労働者に同じように支給するのではなく、平日出勤する正社員には定期券代、週3日勤務程度のパートタイマーには出勤日数分の交通費を支給するという違いを設けることは問題になりません。
  3. 賞与
    会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給する賞与については、その貢献に応じた分を支給しなければならないとされています。賞与については、会社によって恩恵的、功労報償的といった様々な法的性格を持ち合わせていますので、どのような位置付けで支給しているのかを明確にした上で検討する必要があります。

【検討手順】

賃金格差の検討手順としては、以下の通りとなります。

  1. 社員に支給している給与・手当をリストアップする
  2. リストに挙げた給与・手当で、パートタイマー・有期雇用労働者に支給していないもの、支給しているが金額が違うものをチェックする
  3. チェックした給与・手当について、相違の理由が何かを確認する
  4. 3で説明のできない給与・手当について、是正策を検討する

厚生労働省作成の「パートタイム・有期雇用労働法 対応のための取組手順書」にワークシートがありますので、こちらも利用しながら検討してみてください。「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル」では、業界ごとのより詳細な例があります。

なお、対応が困難であるからと言って「正社員の待遇を低くする」「賃金に合うようにパートタイマーや有期雇用労働者の業務を軽易なものに変更する」というような強引なやり方で同一労働同一賃金を達成するのは、トラブルの発展やモチベーション低下、不利益変更による法的リスクに繋がりかねませんのでしっかりと検討してください。

【説明義務】

パートタイム・有期雇用労働者を雇入れた会社は、労働契約の明示の際に上記の均等待遇・均衡待遇についての説明をしなければならないとされていますが、さらに、パートタイマーや有期雇用労働者から「なぜこのような賃金設定にしたのか?」「同じ業務をしているのに、なぜ、正社員と待遇が違うのか?」というような説明を求められた際にも、説明をする義務があります。昨今は、ネット等を通じて情報を得ている労働者も多いので、常に説明をすることができるよう、資料等は準備していかなければなりません。上記で紹介した「パートタイム・有期雇用労働法 対応のための取組手順書」に、説明用のモデル書式がありますので、賃金の検討を行った際にこちらも作成しておくと良いでしょう。

 

【本コラムで紹介した厚生労働省の資料】

・ガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000469932.pdf

・パートタイム・有期雇用労働法 対応のための取組手順書

https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/assets/img/same/000467476.pdf

・不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03984.html


 

社会保険労務士 榊原 拓
さかきばら社会保険労務士事務所
平成26年開業。平成31年から仙台市雇用労働相談センターの相談員として、多くの相談対応やセミナーを行ってきました。
また、資格予備校で社労士講座の講師も行なっており、未来の社労士を育成や社労士試験を研究することにも力を注いでいます。

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